Keith Haring in Barcelona
以前からなるべく早く実物を直に見てみたいと思っていたキース・ヘリング。この2月末にバルセロナの中心ラバル地区にある美術館MACBAのすぐ隣の壁に、こちらの作品「TODOS JUNTOS PODEMOS PARAR EL SIDA」(1989年)が復元されました!
キースの作品が復元されたこと自体は噂に聞いていたので行ってみたいと思っていたのですが、今回はたまたま散歩していたところ偶然出くわしました。
とうとう出会えたことを喜ぶのもつかの間、グラフィティのメッセージが胸に響いたどころか胸を貫き、写真をとってまた歩き続けるはずだった足も止まってしまいました。
この壁に書かれてあるスペイン語の文章「TODOS JUNTOS PODEMOS PARAR EL SIDA」は「みんなで一緒にエイズは止められる」という意味。
そしてこの前向きなフレーズの周りを、人々が手をつないで囲んでいます。ジャンプしたり踊ったり…。
これこそ、彼が実現したかった世界の姿なのだろうと想像します。
1990年キース・へリングは31歳の若さでエイズのため亡くなりました。
この作品はちょうどその1年前、30歳の時に制作されたものの復元。
グラフィティを右から左にみていきます。踊る人たちの隣には蛇がいます。蛇をつつく人と「×」の印がついた泣きわめく人々…。
続くのがさらに長い蛇。コンドームを思わせるものが蛇のしっぽについています。注射針に絡み付く蛇。蛇を切るはさみ。
蛇の下にはスペイン語で「SIDA」と。エイズのことです。
キースはグラフィティの製作を通して政治的な訴えをしたようですが、とりわけこの「エイズ」と「男性間の同性愛」については自身の課題でもあったため、テーマとして何度も取り上げたようです。
このバルセロナという街にこの作品が復元されたことには、もしかするとちょっとした意味があるのかもしれません。
バルセロナには世界各地から同性愛者(こう書くのはカタくて差別してるみたいで嫌いですが、日本語で「正しく」書きます)が集まってくるというそんな一面があります。それがなぜだかは分かりませんが、そうなのです。
ここに来てから、スペイン人も外国人も含めてもう何人もの同性愛者の知り合いや友達ができました。ここでは本当にあるがままの現実で、わたしもカフェやバー、お店など毎日彼らとコミュニケーションをとっています。
「社会に受け入れられている」という変わり者扱いのレベルを越え、もはやそんな違いを意識することすら無いのです。スペイン人女性は「カッコイイ人はみんなゲイで困っちゃう〜」と言います。わたしも正直なところ、たまにそう思います。
こんな風に冗談が飛ばせるほど、わたしたちが生きている時代はキースの時代と比べて(たった25 年ほどの違いではありますが)少しずつではあるけれど差別がなくなってきているのだと思います。
特に、同性愛者への差別が過去の話になりつつあるバルセロナにおいては、その当時を戦い抜いたキースは英雄であり、このグラフィティは彼を讃えるという意味があるのだと思います。
機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。
– Entrance fee: Free
– Place: Next to MACBA (Barcelona)
– Related news in Spanish: El País (Feb 28th, 2014)